会社には、怪我の治療やお葬式の費用などのお金を工面できずに困っている従業員に対して、お金を貸す制度を設けている場合があります。
この制度を従業員貸付制度といい、会社員として働く人が急な出費が生じたとき、銀行や消費者金融だけではなく勤めている会社からお金の借入ができます。
従業員貸付制度は信用情報の照会ではなく、社内審査のみで融資の可否が判断されるため、他の金融機関に借入があっても申し込みが可能です。
本記事では会社からお金を借りられる従業員貸付制度について、前借りとの違いや利用方法、メリットやデメリットなどもわかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
- 外部の金融機関とは基準が異なり審査はゆるい
- 外部の金融機関より格安の金利で利用できる
- 借入金は決められた範囲内で利用する
- 融資を受けるまでに数週間かかる
想定外の急な出費でまとまったお金が必要なとき、カードローンや消費者金融の他にお金を借りる方法を知るきっかけとなれば、幸いです。
従業員貸付制度は会社内の福利厚生の1つ
従業員貸付制度は、福利厚生の1つとして会社が独自の判断で取り入れるかを決められるものです。
銀行や消費者金融のように収益を出すことが目的の融資ではなく、急に金銭が必要となった自社社員を助ける目的を持つ制度であるため、審査は甘めです。
金融機関による貸付に比べても、大幅に低金利で借りられるため、負担が少ないという特徴があります。
会社によっては、社内貸付制度や社内融資といわれており、自社で働く社員の金銭トラブルを事前に予防する目的も持っています。
従業員貸付制度と給料の前借りの違い
給料の前借りと従業員貸付制度は、どちらも緊急時に会社からお金を借りる方法ですが、決定的な違いはお金の出どころです。
給料の前借りは賃金非常時払いという労働者が持つ権利の1つで、給料日前に働いた分の給料を前もって受け取る制度であるため、次の給料から差額を引かれます。
給料の前払いは社員より利用の申し出を受けた場合、会社は法律に基づいて前払いを行う必要があります。
一方で従業員貸付は、給料とは別の資金源を利用した会社からの融資です。
会社の資金を元手に融資が行われるため、自分の給料には影響が及びません。
しかし法律で義務化されている制度ではないため、会社は独自の判断で実施の可否を決定します。
そのため大前提として、会社が従業員貸付を取り入れていないと、その会社で働く社員であっても利用できません。
従業員貸付制度と給料の前借りの相違点は、以下のとおりです。
従業員貸付制度 | 給料の前借り|賃金非常時払い | |
---|---|---|
内容 | 会社の福利厚生の1つで、給料とは別の資金源から提供される | 次回の給料日前に働いた分の給料を前もって受け取る |
性質 | 貸付制度 | 賃金の前払いで貸付ではない |
法律 | 法律上の義務ではない | 労働基準法第25条で定められている|非常時払い |
会社としての義務 | 会社ごとに実施を決められる | 社員から申し出があれば、前払いを行う義務がある |
給料への影響 | 返済金を除き、翌月の給料には影響なし | 次回の給料が減額される |
返済方法 | 月々一定の金額を返済 | 翌月の給料から自動で引き落とされる |
リスク | 必要な少額のみの利用でリスクは低い | 悪循環に陥る可能性がある |
このほか従業員貸付制度の利用対象となる人は、安定した収入があると考えられる正社員のみである場合が多いです。
しかし給料の前払いの場合、会社や雇用形態にかかわらず正社員や契約社員、アルバイトなど労働者であれば誰もが利用する権利を持っています。
給料の前借りは、以下のように労働基準法第25条で定められています。
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
引用元:e-GOV労働基準法-第25条
つまり、社員が非常時にお金が必要になった場合、雇用主は労働者に対して前払いを行わなくてはいけない旨が法律で義務付けられているということです。
従業員貸付制度の導入は会社それぞれの判断で行っている
従業員貸付制度はどの会社にも必ずある制度ではなく、会社の大きさや状況に応じて導入の有無はさまざまです。
労働組合がある会社は福利厚生を重要視している場合が多く、従業員貸付制度を取り入れている傾向が高くなります。
しかし会社が従業員貸付を取り入れるためには、労働組合もしくは働く人の過半数を代表する従業員との間で行う労使協定の締結が必須です。
この労使協定は、雇用主である会社と労働者である従業員が書面で結ぶ就業に関する社内規則を指します。
従業員貸付制度の規定内容は、以下のとおりです。
- 従業員貸付制度を取り入れる目的
- 貸付対象者の条件
- 貸付できる理由の範囲
- 貸付限度額
- 返済方法
- 返済期限
- 貸付金利
規定内容は、会社ごとにそれぞれ異なります。
勤めている会社に従業員貸付があるかを知りたい場合は、総務部や経理部など福利厚生に関わる業務を担当する部署に確認すると、明確な答えが得られるでしょう。
直接聞くのに抵抗がある人は、まずは求人広告の福利厚生欄や社内ルールが記載されている就業規則などを確認してみるのも1つの方法です。
従業員貸付制度を利用できる人の3つの特徴
従業員貸付制度を利用するには、前述した労使協定の貸付条件を満たす必要があります。
貸付条件を満たし、利用対象となる人物像のポイントは、以下のとおりです。
- 雇用形態
- 勤続年数
- 社内の業績や人柄に対する評価
それぞれ解説していきます。
ほとんどの会社では正社員のみが対象
従業員貸付制度の利用対象者は、多くの会社で正社員のみと限定されています。
雇用形態が安定的である正社員であれば、貸付金が未収になる可能性は低いと考えられるためです。
社員の救済が目的の社内における貸付制度であるにもかかわらず、同じ職場で働く従業員に対して公平性が欠けると感じられる人もいるでしょう。
しかし、従業員貸付は会社の純粋な利益から捻出する福利厚生であり、貸付したお金が返済されずに損害が生じてしまっては本末転倒になってしまいます。
会社の利益を守り運営を続けることは、すべての社員の生活を保障するという意味でとても重要な役割を持っています。
下記の表は、正社員が非正規雇用に比べて安定していると考える理由についてまとめたものです。
正社員 | 契約社員やアルバイトなどの非正規雇用 | |
---|---|---|
労働時間 | フルタイム | 雇用体系によっては短時間 |
給与 | 年俸制や月給制 | 時給制や日給制 |
雇用期間 | 期限なし | 期限付き |
待遇 | 給与や手当が充実 | 正社員に比べると劣る傾向 |
従業員貸付制度は、従業員として働いている間だけ利用できる福利厚生となります。
自主的な離職の容易さに加えて会社の業績や社会情勢によって、雇用が不安定な非正規社員の場合、対象外となる場合が多いのも現実です。
中には勤続年数の長いパート職員などであれば利用可能なケースもあるため、どうしてもお金が必要なときには、親しい上司や総務などに相談するのも1つの方法といえるでしょう。
利用金額は勤続年数でほぼ決まる
従業員貸付制度で借入が可能な金額は、10万円から100万円が目安です。
銀行や消費者金融の場合、総借入額が年収の3分の1以下であれば数百万円単位の融資を受けられますが、従業員貸付で100万円以上の融資は基本的に受けられません。
基準額は会社によって異なりますが、一般的には以下のとおりです。
勤続年数 | 金額 | |
---|---|---|
一般社員 | 5年未満 | 10万円 |
5年以上 | 30万円 | |
10年以上 | 50万円 | |
15年以上 | 70万円 | |
20年以上 | 100万円 | |
管理職以上 | 10年以上 | 100万円 |
従業員貸付制度の特徴として、勤続年数や役職の有無によって借入できる金額が高くなる傾向があります。
しかし会社によっては役職がないと、勤続年数がどれだけ長くとも10万円までの借入となるケースも存在します。
そのため大きなお金が必要になった場合、利用条件を事前にしっかり確認するとともに、他の借り入れ手段も視野に入れた検討が現実的な場合も多いでしょう。
審査基準は信用情報ではなく人柄や社内の評価
従業員貸付制度の審査では、申込む社員の人柄や社内における評価が重要視されます。
具体的には、勤務態度や人事評価です。
遅刻やサボり行為、同僚とのトラブルがないかなど、それぞれの会社が重視するポイントで申込者が貸付しても大丈夫な人物かを審査します。
銀行や消費者金融などでお金を借りるときには信用情報の照会が必須ですが、従業員貸付制度では、審査に社外の情報を利用するケースは滅多にありません。
審査が社内で完結する代わりに、連帯保証人が必須である場合も多いです。
そのため外部の金融機関で審査落ちしてしまう人であっても、社内の評価が高い場合、問題なく審査を通過することはよくあります。
反対に、日頃の人間関係にトラブルが多かったり仕事へ取り組む姿勢に問題があると評価を受けている場合、社内審査に通らない原因になるとも言い換えられます。
従業員貸付制度で借りるお金の使用用途は限定的
従業員貸付制度で借りるお金の使い道は会社の規定で決められていて、どんな用途にも使えるわけではありません。
使用用途として認められるのは、基本的に通常ではない状況下でまとまったお金が必要な場合に限られており、具体的には以下のとおりです。
- 身内の葬儀費用
- 入院費用
- 天災による修理・修繕費
- 空き巣・強盗による生活苦の改善費用
- 正当な理由での例外 (国家資格取得費用など)
従業員貸付制度は会社として給料以外で従業員に提供する独自の制度であり、実際の利用条件は会社ごとに多種多様です。
そのため正当な理由での例外には、さまざまなケースが考えられます。
例えば、特定の資格の取得や技術を身につける目的で留学をする社員を増やすと、会社の業務拡大が期待できるとします。
このように会社の利益に直結した社員に対する投資の場合には、正当な理由として積極的な融資対象となるでしょう。
一方で基本的に認められない融資は、以下のとおりです。
- ギャンブル
- 通常の生活費
- 住宅ローン
- 車の購入
- 消費者金融などへの返済目的
緊急性が低く、生活の質の向上や娯楽を目的とした借り入れは基本的にできません。
万が一嘘の申請で融資を受けられたとしても、記載した使用目的で発生する領収書などの提出ができなければ、嘘が発覚し一括返済を求められる場合もあります。
さらに最悪の場合、詐欺として告発されるリスクもあるため、申請内容は正確に記入するように十分に注意してください。
中には住宅や車の購入費用を貸付する制度を設ける会社もある
住宅や車の購入は急を要する事態には該当しないため、基本的に従業員貸付制度では利用できませんが、会社によっては融資をしてくれる場合があります。
住宅や車に関する借入方法は、主に直接融資と利子補給の2通りです。
直接融資は、従業員貸付制度を活用した住宅や車を購入するための高額融資の仕組みで、実施する会社は資金が潤沢で社員に貸付可能な資金が多い傾向にあります。
一方、利子補給は会社が金融機関と提携して、利息の一部を会社が負担する形で社員に融資を行う方法です。
利子補給も福利厚生の1つとして取り入れている会社もあるため、興味がある人は一度社内規則を確認してみるとよいでしょう。
従業員貸付制度の金利は国が決めている
従業員貸付制度で会社から借りた場合も、利息の支払いが必要です。
従業員貸付制度の金利は、銀行や消費者金融などの金融機関の金利を定める法律とは違う基準で、国税庁が定めています。
貸付期間による金利率は、以下のとおりです。
引用元:国税庁No.2606金銭を貸し付けたとき
貸付期間 金利 平成22年から25年 4.3% 平成26年 1.9% 平成27年から28年 1.8% 平成29年 1.7% 平成30年から令和2年 1.6% 令和3年 1.0% 令和4年 0.9%
例えば、10万円を従業員貸付制度とアコムで借入をした場合の適用金利を比較してみます。
借入方法 | 適用金利 |
---|---|
従業員貸付制度 | 0.9% |
アコム | 7.7%〜18.0% |
参照元:アコム-利率はいくらですか?
これから申込みをする場合の適用金利が最大で0.9%と低金利である点からも、他の金融機関から借入するよりも大幅に負担が少ないのがわかります。
福利厚生であるのに無利子で融資が行われない理由は、利息をつけないと贈与税の対象となって会社の税負担が増えてしまうためです。
数十万円程度までの急な出費に利用したい場合、従業員貸付制度が利用できるメリットは非常に大きいでしょう。
次の項では、具体的に会社からお金を借りる方法について解説します。
申込みから融資までは次の6ステップ
従業員貸付制度の申込みは、直属の上司や福利厚生を担当する総務部や人事部を介して行います。
申込みから融資までの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 直属の上司に制度の利用について相談する
- 上司または制度の担当部署から申込書を受け取る
- 必要書類と一緒に記入した申請書を担当者に提出
- 社内審査を待つ
- 審査に通過したら金銭消費貸借契約書を作成
- 指定口座に借入金が振り込まれる
従業員貸付制度の担当が総務部だとしても、上司の許可が必須な会社もあるため、まずは直属の上司へ相談してみるのが無難といえるでしょう。
無事に許可が降りて担当部署から申請書を受け取ったら、使用目的に沿った正しい内容を記入して申請書を作成します。
借入の目的を証明する必要書類は捨てずに保管
申請する際に必要なものは、基本的に以下の3つです。
- 借入希望の旨を記載した申請書
- 使用目的の見積書もしくは領収書
- 印鑑
会社によってはお金の使い道となる見積書、もしくは支払済の証となる領収書の提出が条件となっている場合もあるため、大切に保管しておきましょう。
無くしてしまったり捨ててしまった場合、見積書や領収書の再発行をするなどして使用目的を証明できないと、制度を利用できなくなってしまう可能性も出てきます。
審査に受かったら金銭消費貸借契約書の作成が必須
無事に必要書類を提出して審査に通った後は、融資を受ける前に必ず金銭消費貸借契約書または手書きの借用書の作成が必須です。
金銭消費貸借契約書は、お金を貸す会社側とお金を借りる従業員の間で結ぶ契約書です。
この契約書には、貸付けした金額や利息、返済方法や期間などの条件を明記します。
両者が記載した契約内容に同意すると会社が従業員へお金を貸して、従業員は利息を含めた金額を月々返済することになります。
金銭消費貸借契約書は、万が一のトラブルを未然に防ぐために貸借の条件を明確にしておく重要な文書です。
会社に指定する金銭消費貸借契約書がない場合は、自作して提出します。
借用書に決まった書式はありませんが、自作する際に記入する内容は以下の項目の記載が一般的です。
- 金銭の借用書である旨のタイトル
- 会社と従業員の名前と住所
- 署名捺印
- 借入した日付
- 借入した金額や返済期日
- 返済方法
- 金利の有無
- 連帯保証人がいる場合は住所と署名捺印など
金銭消費貸借契約書や手書きの借用書を作成する際は、印紙税法によって収入印紙を貼付し消印をする必要があります。
消印を押すと、会社と従業員の間でお金の貸し借りに関する契約が締結していることが証明されます。
借り入れる金額により変わる印紙税金額は、以下のとおりです。
借入金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
参照元:国税庁No.7140印紙税額の一覧(その1)第1号文書から第4号文書まで
金銭消費貸借契約書の作成は、会社側の貸付金の確実な回収意図があるだけでなく、何かトラブルが発生した際に借り手である従業員を守る役目も持ち合わせています。
そのため借り手が一般の従業員である場合はもちろん、役職者や幹部職員であっても必ず作成する書類となります。
借入の返済は給料天引きもしくは口座振替
従業員貸付制度の返済方法は、給料からの天引きもしくは口座振替です。
どちらも銀行の窓口で振込みをする必要はありませんが、違いとして以下の点が挙げられます。
給料からの天引き | 給料が支払われると同時に引き落とされるため、残高不足の心配がない |
---|---|
口座振替 | 給料日とは別に振替日が設定されるため、残高の確認は必須 |
口座振替の際、残高不足などによる支払い遅延が発生しても、信用情報機関へ登録される恐れはありません。
しかし会社の資源からお金を借りる従業員貸付制度は、審査時はもちろん返済時の対応についても人事評価に関わるのが特徴です。
万が一残高不足などで引き落としができない場合、担当部署へ情報が連携されて社内に広がる恐れなど、社員としての評判を下げる可能性もあります。
さらにあまりにも悪質と判断された場合には、一括返済の要求や連帯保証人へ連絡が入るなど話がこじれる可能性もあるため、返済の遅延には注意が必要です。
返済期間や回数は会社ごとに異なる
従業員貸付制度を利用した借入の返済期間は、1〜5年を目安に設置される傾向にありますが、会社がそれぞれのルールに則って決めています。
以下は従業員貸付制度を使って、融資を受けた場合の返済例をまとめたものです。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
借入金額 | 10万円 | 100万円 |
借入期間 | 1年間 | 5年間 |
月々の返済額 | 元金8,333円+利息 | 元金16,667円+利息 |
消費者金融や銀行のように数百万円単位の借入が難しい従業員貸付制度では、多くて100万円程度の融資が現実的です。
返済期間にもよりますが、月々の返済額が2万円以下であれば、支払いに追われず正常な生活を営みながら十分に返済できる範囲でしょう。
さらに会社の規定範囲の期間であれば、借入した従業員が設定できる場合もあるため、詳細は勤務する会社に問い合わせてみるのをおすすめします。
遅延が続くと追徴の対象になる場合がある
会社が従業員に対して低金利でお金を貸付する場合、平成26年以降の貸付に限り、金利が貸し付けた年の特例基準割合として定められた利率と同等であると課税されません。
しかし何らかの理由で返済が滞って税務調査などで贈与と認識された場合、所得税の対象になります。
これは借入する従業員に税金の追徴があるだけでなく、会社側も貸し付けたお金を福利厚生として計上できなくなるなど、会社にも損害を与える結果となってしまいます。
返済完了前の退職は一括返済が条件
従業員貸付制度は従業員だけが対象となる福利厚生であるため、退職する時点で借入したお金の完済が必須です。
退職金がある場合、残った借入金の返済に充てるケースが多いですが、ない場合は現金で支払ってからの退職となります。
一括の清算ができないと、連帯保証人に請求がいくなど事態が悪い方向に進む原因にもなります。
そのため近い将来に転職を検討している人は、少額の借入にとどめるなど計画的な借入と返済を心がけましょう。
次の項では、ここまで解説してきた従業員貸付制度について、メリットとデメリットという視点からまとめていきます。
メリットとデメリットを比較して賢く制度を利用する
従業員貸付制度は、銀行や消費者金融などとは違うメリットが豊富です。
具体的なメリットは、以下の内容が挙げられます。
- 低金利でお金が借りられる
- 審査基準が甘い
- 返済に手間がかからない
それぞれ解説します。
外部の金融機関より10%以上も低い金利でお金が借りられる
従業員貸付制度は、お金を貸し付けて利益を得るための取り組みではなく、社員をサポートする福利厚生の1つとして会社が従業員に対して行う融資制度です。
そのため、銀行や消費者金融などに比べても格段に低い金利で貸付を行っています。
必要な分だけ上手に利用すると、外部の金融機関から借入するより10%以上低い金利率で融資を受けられるのは、他にない大きなメリットです。
社内の福利厚生であるため審査基準がゆるい
銀行や消費者金融では、信用情報機関から信用情報を照会して、支払いの延滞など金融トラブルの有無や現在の借入総額を確認するなど厳しい審査を受けます。
以下のように貸金業法のもと運営される外部の金融機関では、個人へお金の貸付を行うとき、返済能力の評価の基準として信用情報の確認が義務付けられているためです。
貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には、前項の規定による調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。
引用元:e-GOV貸金業法第十三条2
一方で従業員貸付制度の審査基準は、仕事ぶりや部署内における振る舞いなどの社内評価のみで融資の可否を判断するため、外部の金融機関の審査に比べて基準はゆるいです。
さらに審査は同じ従業員が担当するため、借入に正当な理由があり普段から同僚と良好な関係性を築けている人であれば、融資が受けられる確率が高いというメリットがあります。
しかし、遅刻が多かったり約束を守らなかったりなど勤務態度や人物像に悪い噂が多い人の場合、審査の通過が難しくなるため日頃の言動に注意も必要です。
給与天引きで返済すれば手間も遅延も起こらない
労使協定の締結のもと利用できる従業員貸付制度では、給料から天引きする形で借り入れたお金の返済をおこなえます。
口座振替前の残高チェックや、振り込み手続きの手間と支払い漏れのリスクなく利用できる点は大きなメリットです。
従業員貸付制度には以上のようなメリットがあり、銀行や消費者金融などでお金を借りる以外で有効性の高い借入方法となります。
しかしメリットがあると同時に、デメリットもいくつか挙げられます。
- 借入できるまで時間がかかる
- 連帯保証人を必要とする場合が多い
- 同僚に制度の利用を知られやすい
それぞれの内容について、具体的に解説します。
融資を受けるまでに時間がかかる
会社のお金を動かして提供する従業員貸付制度は、申込みから融資を受けるまでに2〜3週間程度を要するのが概ねの目安です。
申込み書類が受付から最終的な判断を下す権限者まで届く期間は、会社の規模が大きくなるほど長引く傾向があります。
長引くと1ヶ月を超える事例もあるため、早い融資を希望する場合は、申込み時にその旨も伝えると考慮してくれる可能性が高まるでしょう。
しかし、今日明日中など今すぐにまとまったお金が必要な人が利用するには不向きであるため、他の借入方法も検討する方が得策です。
例えば消費者金融のアイフルの場合、最短25分で審査が終わり、即日融資を受けられます。
さらに銀行系カードローンは即日の融資はできませんが、ジャパンネット銀行やオリックス銀行であれば最速で翌日、平均して2〜3日中には審査結果が出て融資が受けられます。
多くの場合で連帯保証人が必要
中には連帯保証人を必要としない会社もありますが、多くの会社では貸付条件として連帯保証人を求められます。
営利目的ではなくとも慈善活動ではないため、会社として返済されない自体をできる限り回避するためです。
家族や親しい友人にお願いできない状況の場合、制度の利用にあたってかなり大きな障壁となるでしょう。
誰にも知られずに今すぐにお金が必要な人には不向き
従業員貸付制度は社内に審査担当者がいるため、情報が漏れて噂になってしまう可能性はゼロではありません。
担当者に口外を避けて欲しい旨を伝えていても、審査の話を偶然聞いてしまったり業務の話の流れでつい関係者以外に話してしまうリスクはつきものです。
万が一噂が回って上司や同僚に知られてしまうと、人間関係に亀裂が入ったり嘲笑の対象となったりなどで、精神的に苦しい状況に陥ることも考えられます。
そのため同僚や上司にお金を借りていると知られたくない人の場合、従業員貸付制度は不向きである要素が多く、外部の金融機関からの融資を考える方がよいでしょう。